不要になった衣類を「バイオ燃料」に活かしませう

昨年、原宿のコミュニティセンターで行なわれた「衣類回収イベント」。このイベントでは単に古着を集めてリユースするだけでなく、不要になった衣類はバイオエタノールなどの燃料にリサイクルするという画期的な資源循環の仕組みを取り入れていると聞き、興味があったのでさっそく参加してみました。

バイオ燃料って、あまり聞き慣れない言葉ですよね。これは、動物や植物などの生物体(バイオマス)の持つエネルギーを利用した燃料のことで、石油や石炭などの化石資源に代わるエネルギーとして、いま注目されている再生可能エネルギーのひとつです。そのエネルギー源は植物系と廃棄物系に分類されます。おもにトウモロコシや、サトウキビなどの植物を発酵させてバイオエタノールに転換し燃料として利用する植物系に対して、廃棄物系は、廃棄物の焼却によるエネルギーを利用。このイベントの場合は、服に含まれる綿繊維からエタノールを作っています。

そのため、廃棄物となる衣類をたくさん集めないと、燃料であるエタノールが作れません。それも泥などの汚れている衣類はダメ。不要品といっても、集めるのはなかなか大変なようです。僕も微力ながらも、家の押入れに眠る古着を20着ほど持っていきました。
着いたのはお昼頃でしたが、段ボールが10箱ぐらいになっていて、担当者の方にお話を聞くと、1日でだいたい40箱ぐらいが集まるようです。やっぱり環境問題やエコへの関心が高い人は、世の中にたくさんいるもんだなあ、改めて痛感しました。

このイベントは、日本環境設計株式会社とシブヤ大学の「衣料循環ゼミ」の学生たちの手により運営されています。なかでも「日本環境設計株式会社」は、こうした廃棄物系のバイオエタノールの製造を日本で初めて手がけた会社らしいのです。その工場は山口県にあるとのこと。僕のような知識のない者からすれば、原料さえ揃えばエタノールなんて簡単に作れそうな気がするが、綿繊維からエタノールにするまでに、様々な工程があり、思った以上にコストがかかるようです。聞いた所によると(若干うろ覚えだが)シャツ1枚からエタノールを作るのに約5円の費用かかるとのこと。

そういえば、最近の衣服は綿だけでなくポリエステルなどの合成繊維が使われていることが多いので、実は綿とそうでない原料に分別するだけでも手間や時間がかかりそう。そのうえ、綿を酵素で分解してグルコースなるものをつくり、それを酵母で発酵させて、バイオエタノールができあがるって・・・工程も複雑です。

こんな仕組みを知ると、設備投資だけでなく、回収拠点の設置、事業化のための費用をどう生み出すのかなど、バイオ燃料を世の中に普及させるには、まだまだ時間がかかりそうな気がしてしまいます。コストの問題も、やっぱり回収時にお金を徴収されるのは、国民としては抵抗を感じますね。個人的には、ならいっそのこと、PC(パソコン)などと同じように購入時の金額に含まれているほうが、世の中には浸透しやすいように思います。

日本はコモンズの悲劇により、生物多様性や温暖化対策については、目標に対して未達成な部分が多いけれども、資源循環については罰則効果もあり、順調に進んでいると、環境白書などでは明記されています。しかし、細部にわたって見たときには、まだまだ未成熟な分野もじつは多いように思います(これを温暖化対策とみれば、これからってことなんでしょうけど)。再生可能エネルギーとしては太陽光発電風力発電などもあり、バイオ燃料はその1つでしかありませんが、日本は石油や天然ガスなど化石エネルギーに8割を依存しているのが現状です。それらの可採年数も専門家によって見解はまちまちですが、石油にいたってはあと41年ほどと言われていますが・・・手遅れになる前に、政府の早急な対策を切に願うばかりです。

なんか、最後は暗い話しになってしまいましたが、次は楽しい話題をご報告します。今年も身近ながらも新たなエコの取り組みに対して、ちょっと目を向けていきたいと思います。ではでは、本年もよろしくお願いします。ちなみに、今年も1月10日に衣料回収イベントを行なうそうなので、興味のある方はぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

◎日本環境設計株式会社 http://www.eecot.com/
シブヤ大学 http://www.shibuya-univ.net/